こんばんは。World Music Barへようこそ。
日本も間もなく、梅雨入りになります。
雨つづきの毎日は、気分も少しトーンダウン。
そんな時は、当店で普段と違うジャンルの音楽に触れて、新しい発見を楽しむのがおススメです。
本日もどうぞごゆっくりお過ごしください。
今夜ご紹介するナンバーは、イギリスの偉大なるシンガー、Rod Stewartが1989年に発売したコンピレーションアルバム『Storyteller – The Complete Anthology: 1964-1990』から、「This Old Heart of Mine(with Ronald Isley)」です。
この曲は、US Funk・R&Bバンドである、The Isley Brothersが1966年に発表したものが原曲です。
その後、著名なアーティストにカバーされ、Rod Stewartも6枚目のスタジオ・アルバム「Atlantic Crossing」にソロ・カバーを収録しました。
今夜ご紹介する、ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)との共演Ver.は、この『Storyteller』が初収録となりました。
この二大LegendのVer.は、全米10位、アダルト・コンテンポラリー・チャート1位を記録しました。
私がこの曲を初めて知ったのは、公式Music Videoです。
Rod StewartとRonald Isleyがとても楽しそうに歌い・踊る姿に魅了され、悲しい歌詞なのにとても明るくて、その対比が私の心に響きました。
このMVは、Rod Stewartのキャリアを振り返るべく、彼の豊富な音楽の歴史を象徴する作品として制作されています。
そしてアルバム『Storyteller』で待望収録された楽曲として位置付けられており、2019年12月に公式にYouTube上で公開され、現在も多くのファンによって視聴されています。
ビジュアル面では、スタイリッシュな編集技法と照明の工夫が随所に施されており、楽曲の持つノスタルジックかつSoulfulな雰囲気を引き立てています。
Rod Stewartの存在感あふれるパフォーマンスと、Legend VocalistのRonald Isleyの独特なボーカルが映像の中で巧みに融合され、視聴者にその音楽性や時代感覚を強くアピールしています。
レトロな映像美と現代的な仕上げが見事に両立しており、過去と現在が交差する魅力的な映像体験を提供しているのが特徴です。
また、この公式MVは、単に楽曲のプロモーションの域を超え、Rod Stewartの音楽キャリアの集大成として、ファンにとっては懐かしさと共に新たな感動を呼び起こす作品となっています。
映像に溶け込む細部の演出やビジュアル効果は、楽曲のテーマである「This Old Heart of Mine ”歳月が刻ざまれた心”」のもつあたたかさと儚さを見事に表現しており、視聴者に多層的な感情を伝える手段となっています。
この曲の特徴は、悲哀な主人公の気持ちが詠われた歌詞と、ポップで明るい旋律の対比です。
KeyはC-codeで、トニック、サブドミナント、ドミナントといった基本的なCodeの進行が巧みに構成され、親しみやすい・心地良いハーモニーとリード感を生み出しているのが特徴です。
このあたりは、ダンスミュージックとして皆が躍りたくなるような、Motownの美学が込められているように思えます。
この旋律は、歌詞のもつ単なる悲哀だけではなく、そこに潜む反抗心や生き抜く強さ、そして希望の兆しを感じさせる効果があります。
つまり、切なさと前向きさの両面を同時に響かせる「ビター・スウィート」の魅力を醸し出していると言えるでしょう。
それでは、お聴きください。
このSync Projectについては、詳細なエピソードが存在しておりませんが、Rod Stewartは自身の音楽制作において本物のSoulを求めていた、という背景から、Ronald IsleyというMotown界の象徴的な人物との共演が自然な流れとして企画されたようです。
当時の制作チームが交渉の中心となり、両者の才能が融合することで、伝統的なソウルサウンドを現代のPop &Rockに再解釈する試みが実現したのです。
元々、この曲は1960年代のMotownの黄金時代を象徴する一曲でしたが、Rod Stewartは自らの個性的なRock Spilitと、Ronald Isleyの持つ本物のSoulfulさを融合させることで、時代を超えた作品の魅力を再解釈しようとしました。
つまり、過去のHotなGrooveやEmotionを活かしながらも、1980年代ならではのクリアなサウンドや、シンセサイザー、エレクトリックピアノといった当時の最新の音色を取り入れるという、二つの世界の橋渡しを意図していたのです。
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タイトルの「This Old Heart of Mine」は、直訳すると”古い心”となりますが、上記で私は敢えて”歳月が刻まれた心”と表現させていただきました。
この曲は、人生経験や恋愛の数々を重ねて、寂しさや切なさ、さらには儚さとたくましさが共存する豊かな感情を詠っています。
ずっとずっと長い間、愛する人を想い続ける気持ちがストレートに詠われています。
つまり、単に”古い心”というだけでなく、”味わい深い”、”成熟した”心情を表現していると考えています。
悲哀を感じさせる歌詞と、明るいポップな旋律との対比が、聴く者の心に一層の切なさや哀愁を呼び覚まします。
音楽におけるこの逆説的なアプローチは、ただ単に一方の感情を伝えるのではなく、複雑で二面性のある心情、つまり悲しみの中に潜む希望や、暗闇の中の一筋の光を表現するための技法としてよく用いられます。
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まるで、雨空や曇空の日にふと見える晴れ間のような、わずかな明るさが、逆に心の奥底にある痛みや孤独を際立たせるような感じではないでしょうか。
雨のあとのあたたかく明るい陽射しを待ちながら、ひとときの雨空をゆったりとした気持ちで過ごすのも、悪くはなさそうです。
今夜もご来店いただきましてありがとうございました。
Don’t worry too much cause each day that passes by.
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