こんばんは。World Music Barへようこそ。
土曜日から日曜日の夜は特別な時間です。
誰も知らない、誰にも教えたくない、自分だけの時間。
少しのあいだ、お客さまを音楽旅行へお連れします。
今夜は、Adult Oriented Rock、AORを一曲、ご紹介します。
日本のCity Popミュージシャンにも大きな影響を与えたAORというジャンルは、都会的で洗練された大人の音楽、というイメージがあります。
今夜ご紹介する作品は、今夜のような静かな夜にぴったりなナンバーです。
フランスのアーティスト、ガエル・ベニヤミン(Gaël Benyamin)とジェローム・ブーレ(Jérôme Beuret)で結成されたユニット、NightShiftの「All Night Through」(2007)です。
ガエル・ベニヤミンは、フランスを代表するAORミュージシャンです。
数多くのユニットで活躍していますが、最も知られているのはGEYSTERでしょう。
さて、NightShiftはガエルとジェロームが2005年にライブ会場で出会ったことから始まります。
17歳でギターを弾き始め、並外れた作曲能力に恵まれたジェロームの才能に、ガエルはすぐに制作に取り掛かることを決意します。
そして2年後、70年代~80年代の偉大なAORアーティスト達からインスピレーションを得た11曲からなるファーストアルバム「Full Moon」を発売します。
AORを愛する二人の想いが詰まったこの作品は、すぐに注目を集め高い評価を集めました。
イントロからAOR感100%のこの曲は、王道のキーボードサウンドと泣きのギター、そして8ビートのE minor、ブリッジのサックスと、何とも言えない哀愁漂う世界観を感じさせてくれます。
Titleの”All Night Through”のとおり、一晩中誰かを愛する切ない気持ちでいっぱいの主人公の想いが全編に溢れます。
Outroの音が消えてからも続く、今夜だけの心のTime Tripへお出かけください。
曲だけでなく、このアルバムジャケットも、ビジュアルからでも思わず手に取りたくなる、とても素晴らしいデザインです。
NightShiftはこのファーストアルバムで多くの人々の心を掴みましたが、2枚目のアルバムを発表したのち活動休止となります。
ソロ活動でもルイス・レイク(Louis Lake)として活躍していたジェロームが、自身の2枚目のソロアルバムの完成を前に、2023年に病により短い生涯を終えたのです。
ガエルは彼の意志であった「カリフォルニアの西海岸色を取り入れたアルバム」を受け継ぎ、遺作となったアルバム「Into The Lens」を完成させたのでした。
そしてNightShift2枚目のアルバム「THE FLYBUSTER」も、ジェロームの意志を受け継ぎ、ガエルが完成させます。
アルバム名は、ジェロームのニックネームに敬意を表したものだそうです。
二人の固い友情は、出会った瞬間に魂レベルでつながっていたのだと私は思います。
2つのアルバムの制作について、ジェロームはフランス・ドゥー県で配布されている”HEBDO25”誌にこのように語っています。
まるで使命を与えられたかのように、このアルバムを完成させようと決めていた。
制作中はいつもジェロームが隣にいるような気がして、10日ほどで全てが完成した。
先日のブログにも書かせていただきましたが、音楽は人生を変えるほど偉大なものと私は思っています。
作品を創るアーティストも、作品に出会う人々も、同じ空の下で、様々な環境や地域でその音楽に出会い、心を動かし、動かされます。
そして”生涯を通して作品を届け、作品を受け取り、受け継がれる”ことになるのです。
やがて、その一つ一つの作品にはそれぞれのドラマが刻まれてゆきます。
誰のドラマかわからなくても、その作品にドラマを感じたら、それは出会った人だけに与えらえた宝物です。
**
今夜も、閉店のお時間となりました。
またのご来店をお待ちしております。おやすみなさい。
(FM Radio “World Music Bar” 当店のラジオ番組もお楽しみください ~ by stand.fm)