こんばんは。World Music Barへようこそ。
先日、ふとあることを思い出しました。
小学生の頃に初めて買った雑誌に、”芸能人名鑑”(仮)のような名前の付録本がついていました。
その中に、芸能人の情報やプチエピソードが掲載されていたのですが、”ファンクラブ会員数”という情報も掲載されていました。
その数字が、今も鮮明に残っています。
以下は、私の記憶にある”当時の(年代不明)”数字です。
順位 | アーティスト名 | 会員数(当時) |
1位 | サザンオールスターズ | 50,000人 |
2位 | THE ALFEE | 49,500人 |
3位 | TM NETWORK | 40,000人 |
4位 | 米米CLUB | 30,000人 |
4位 | 徳永 英明 | 30,000人 |
この情報をずっと鮮明に覚えていた理由は恐らく、名だたるグループが上位を独占する中、ソロアーティストとして30,000人ものファンクラブ規模をもつアーティストの存在に非常に驚いたからだと思います。
今夜は、現在も大活躍されている日本を代表するVocalist、徳永英明さんの曲をご紹介します。
どうぞごゆっくりお過ごしください。
お届けするナンバーは、1988年4月に発売された徳永英明さんの4枚目のスタジオアルバム『DEAR』から、「真夜中のリバティー」です。
この曲はCM7で8ビートのシンプルな構成で、歌詞も非常に短くまとめられています。
淋しさをソファーに すべらせながら
“泣かせて”と 口元揺らした君さ
ブルー都会の幻に 何故ルージュ飾り生きるの
君が信じてた 真夜中のリバティー
いつも愛という名の 虚しさはこぶだけさ
泣き疲れこの部屋 訪ねる度に
つらい程 綺麗になってくけれど
ブルー心の素顔 まだ見せた事はないよね
君が探してる 真夜中のリバティー
きっと今夜落とした 涙のそばにあるよ
I love you
I love you
曲調もさることながら、歌詞も一人の女性に対する深い愛情や想いに溢れ、とても切ない作品です。
(ここからは私の考察となります)
物語(曲)の舞台は、都会の夜。
彼女を見つめる彼の視線で、美しく輝いている彼女の外見的な姿と、彼女が日々内面で感じている孤独や真の自己解放の難しさに直面する彼女への想いを静かに見守る気持ちが詠われています。
この詞は、とても”リリカル(Lyrical)”です。
この曲が制作された1980年代後半、東京はバブル経済の真っ只中で、急速な経済成長と都市開発、洗練されたライフスタイルをみることが出来ました。
しかし、表面的には豊かさや成功が印象づけられる一方で、急激な変化や過剰な消費文化の影響により、一部の人々は精神的な孤独や虚無感を抱く現実もありました。
この曲は、そのような時代背景の中でつくられたという意味でも、非常に感情に訴えるものがあります。
”リバティー”とは”選択の自由”という意味をもちます。
豊かで華やかな時代であったにもかかわらず、忙しさや慌ただしさの中でたったひとりの時間を過ごす「真夜中」には、「リバティー(自由)」という言葉がふさわしいのです。
この作品に表現されている「自由」と「孤独」は表裏一体です。
「自由」が陽で、「孤独」は陰。
どちらも、この物語の主人公の気持ちや感情で得られるもの(経験)です。
しかし、現実は、「自由」こそが一生懸命頑張った後の”真夜中”にしか得られず、その”真夜中”は「孤独」にもさせてしまう。
”真夜中”は、日常の喧騒や表面的な輝きが消え去った静けさの中で、内面の本質が浮き彫りになる時間です。
その中で「リバティー(自由)」を得ることは、外見的な自由とは違い、むしろ孤独の中でしか味わえない、内面的な解放を象徴しているのかもしれません。
とても、切ない歌詞です。
この”切なさ”は、「自由」が必ずしも周りからの温もりや人との関わりの中で得られるものではなく、むしろ、「孤独」という状態でこそ、自分自身と向き合い、本当の「自由(リバティー)」を感じることができるという、ある種の皮肉めいた現実を物語っています。
この主人公を想う男性の存在に気づかないけれど、世界のどこかで、彼女を想い、愛する存在がいることもわかります。
その存在は、大きな安らぎと希望を与えてくれます。
そして、その希望こそ、本当の「リバティー(自由)」につながるのです。
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この曲が収録されているアルバム『DEAR』には、10曲が収録されていますが、どの曲もとても素晴らしく、心にささる一曲が必ず見つかるはずです。
そして、徳永英明さんの澄んだ歌声と、ライブ映像で見られる一曲一曲に込められた魂が、その瞳の輝きに映り、聴く人々を瞬く間にその世界へ引き込んでゆくのです。
今夜ご紹介した「真夜中のリバティー」をもう一度聴いたとき、あなたはどんな感情を抱くでしょうか。
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今夜も閉店のお時間となりました。
おかげさまで、このWorld Music Barももうすぐ70回目の開店を迎えます。
当店でご紹介している作品が、少しでもお客さまの心に届いていたらとても幸せです。
本日もありがとうございました。
Time alone isn’t loneliness – it’s a moment wrapped in freedom, filled with quiet happiness.
(FM Radio “World Music Bar” 当店のラジオ番組もお楽しみください ~ by stand.fm)
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